016 浴室

写真は「下大久保の家」の浴室です。
浴室の床面と壁面の腰高さ(およそ90cm)までは100mm角のタイル貼り、壁面の腰から上と天井を能登ヒバ(厚15mm)の板張りで仕上げています。
入浴時にはヒバの香りが浴室内に充満し、リラクゼーションの効果がいっそう高まります。
写真中央下部の黄色の四角形は洗濯時にバスポンプを使用するための小窓です。
※能登ヒバの詳細については、このblog内の木のはなし「010 能登ヒバ」をご覧下さい。

私の生まれ育った住まいは昭和40年代に建てられた普通の住宅だったので、何の変哲も無いタイル貼りの浴室でした。それが学生時代に一人暮しを始めてから、ユニットバスの浴室での生活がしばらく続くことになります。窓も無く、床・壁・天井全てが石油製品で作られた味気のないものでした。それでも入浴することにあまり興味が無かった(毎日体を洗えるだけで十分と思っていました)ので、何の不満もなく過していました。ところが就職してから奥さんの勤めていた事務所の内覧会に行ったときに初めて木の板が張られた浴室を見て、考え方が一変することになりました。それまでに雑誌等では見て知ってはいましたが、実際にその空間に浸ることで得られる経験が成長させてくれたのでしょう。以来、自分の設計する浴室は、温かみのある開放的なものを求めるようになりました。
浴室にタイルや木を持ち込むというのは工事監理やメンテナンスの面で気を使います。ユニットバスの場合は工業製品をドンと置くだけですから、万一の場合の責任はメーカー側にありますが、タイルや木の浴室では工務店の責任とばかりは言えません。安心して長期に渡り使用できるようなディテールと適材適所の仕上素材の使い方などが必要不可欠です。そしてメンテナンスを容易にするために辿り着いたのが、冒頭のタイルとヒバ板の使い分けでした。(A)