051 背割り

これは「白い家」の柱を写した写真です。ご覧のように柱には乾燥によるひび割れが生じています。天然乾燥の素材であることの証ともいえるでしょう。ちなみに人工乾燥により材は表面の物性が変化し硬化するため、表面の乾燥割れはある程度防げますが、材の内部でひび割れが生じています。
木造建築では、このような乾燥割れを防ぐ手法として「背割り」という加工を行なったりします。これは事前に柱の一部を切り込み、自己調整作用により化粧面(見えてくるところ)にはひび割れを生じさせないようにする手法で、主に仕上げとして見えない部分(壁の中など隠れてしまうところ)に行ないます。

私たちの設計する住まいでは、床柱(とこばしら)などの特別な部位を除いて、自主的に「背割り」を施していません。それは「背割り」によって生じる構造強度の低下を嫌うためです。木は繊維の集まりです。(ストローを束ねたと考えると分かり易いと思います。)ひび割れは乾燥などによりその束が外れて生じますが、構造上の強度低下はありませんが、繊維を人工的に斬ってしまうと、斬られた繊維の分だけ強度が低下することになります。このことは実験によって確認されていますが、あまり知られてないため、見た目やクレームを重視して背割りが日常的に行なわれてきました。
「木が生きているから・・・」という言葉もよく耳にしますが、切られた時から木は死んでいます。そこに残されるのは、自然素材としての「木材」であり、無垢材という扱いにくい性質の素材に他ありません。もちろん調湿作用はあっても「呼吸」はしません。また樹種ごとに性質も異なっています。自然素材を扱うにはその素材の性質をよく知らなければいけません。住まいづくりを通して学ぶことは山のようにありますし、私たちも一生、学び続けることになるでしょう。住まい手の方々の笑顔を求めて。(A)

現場のはなし

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