056 技術とデザイン


日産自動車から発売され、ヒットセールスを続けているcube(キューブ:左)とNOTE(ノート:右)です。この2台はともにマーチのプラットフォームを利用して作られていますが、どちらもデザイン性が高く、優れたパッケージングの車です。特にNOTEは響きの良いネーミングと使い勝手の良さから、私もいいなぁ・・・と思っています。少し大袈裟な部分もありますが、背面のかたちは結構好きです。
業績不振に陥った日産がカルロス・ゴーンさんを経営責任者に招き、V字回復を遂げたことは皆さんご存知の通りです。中でも中村史郎さんをチーフ・デザイナーとして招き入れ、デザインを販売戦略の核とした「乗りたくなるような車づくり」を進めてきたことがこの結果をもたらしたと言えるでしょう。
さて当の日産は経営不振に陥るまではトヨタに次ぐ不動の国内第2位メーカーとして君臨してきました。この頃は「技術の日産」と呼ばれ、技術力の高さを「売り」にしていました。しかしバブル絶世期の中に売られていた車を見ると、外見上はそれなりにまとめられていたものの、中は成金趣味の塊のようなデザインで、私は欲しいとも乗りたいとも思いませんでした。またバブル崩壊後の車に至っては、一部を除いて外見すら目を覆うような状態でした。聞くところによると、この頃の日産ではデザイナーが隅に追いやられ、技術陣が強いアンバランスな状態だったそうです。
一ユーザーの立場からすると、現在の日産には乗ってみたくなるような「ワクワクする車」がたくさんあります。「デザインの日産」として見事に再生した様子を見ていると、なるほどV字回復した理由もうなずけます。きっと技術とデザイン(機能とかたち)が丁度良いバランスで保たれていることをユーザーが敏感に感じた結果なのでしょう。これからもデザインや技術など特定部分が目立ち過ぎることのないような、ワクワクする車づくりを続けて欲しい願っています。(A)