068 リビング階段

これは「桜町の家」の居間の写真ですが、正面の漆喰塗の壁(クリーム色の部分)の裏には階段が隠れています。その横には白く塗られた扉が見えますが、これは階段下を利用して設けた、AV設備のための収納扉です。また、ここは階段の踊り場にあたり、階段を折り返すと2階のワークスペースへとつながっています。

「リビング階段」という言葉の定義は非常に曖昧で、一般的には「リビングの中に設けられた階段」を差しているようです。私たちは打ち合わせの中で積極的に「リビング階段」という言葉を使いません。どうもこの日本的な造語が馴染めないのと、結果的にリビングの中に階段を設けることはあっても、積極的に設けることがないからでしょう。よく「リビング階段を設けたので家族のふれあいが感じられます・・・」というような表現を目にしますが、これもおかしな話で階段とは上下階の空間をつなぐためにある設備のひとつですから、実際には吹抜などの空間が上下階を一体化するという表現が正しいのです。
さて「桜町の家」では結果的に居間の中に階段を設けていますが(それでも目に付かないように壁で隠しています)、階段を上がった先には下階と連続するもう一つの空間「ワークスペース」が用意されています。ここは書斎代わりに使ったり、子供が勉強したり、特に用途を特定してはいませんが、居間の機能とは異なるが、空間を共有したいような機能を配しています。吹抜越しにつながる2階の空間にも長時間留まれる場所がある訳ですから、(一時的な通過動線である)階段のみで終わってしまう場合と比べると、家族の交流は密になることでしょう。
話を元に戻すと、個人的には階段は空間の主役として設けるべきでないと思っています。しかしなんらかの条件によって空間の目立つ部分に設けないといけない場合は、写真のように漆喰塗の壁で隠したりして「主役」をすりかえる作業を行なうことにしています。新しく主役になった壁は、TVや飾りだなを設けたり、絵を飾ったり、その住まいの主人の趣味を表すような顔になり、居間の主役として相応しい姿で空間に溶け込むことでしょう。(A)

068 リビング階段” に対して2件のコメントがあります。

  1. soe より:

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    私も雑誌やTVなどでいろいろと家を見ていてリビングに階段があるのは何か落ち着かない感じがして違和感を感じていました
    うまく隠して別の用途として使えるのはとても良いですね
    話は変わりますが行列のできる建築家名鑑見ました
    私でも知っている建築家の方々と共に水野さんが載っていて驚きと共に嬉しく思いました
    本の中に書いてあった子供が居るから散らかっているのではなくて子供が居ても片付いている家というのにとても共感が持てました
    私がもし家を建てる事ができる様になったら参考にしたいと思います
    奥様がお子様に本を読んであげている写真も温かい感じがして良かったです

  2. miz-arch より:

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    私も一緒に載っていた方々に驚きましたから・・・(笑
    「散らかる」を解消するには「散らかりにくい」または「片付けやすい」ということを念頭にプランニングすれば良いのです。この件は次回にブログでお伝えできればと思います。
    本を読み聞かせているのはここでも紹介したkino workshopさんに作って頂いたソファー(カウチ)ですが、写真に関して言うと、奥さんは「足が写ってしもた・・・」と嘆いていました(笑 でも子供にとっては、いい記念になりました。

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