070 植栽工事

月岡の家」が竣工を迎えました。
現場に敷かれていた床の養生が外され、美しい床板(TS産、厚30mm)が姿を現しました。製材して間もないときにしか出ない(経年と共に飴色に変化していく)、薄い桜色がとてもきれいで、何度見ても感動します。
写真でも分かるかと思いますが、この現場には節のない杉板が通常より多く納品されたため、居間にまとめて張りました。節なしは美しいのでしょうが、無垢板にあって当然の「節」がないのは、力強さ(生命の息吹みたいなもの)が不足しているせいか、私には違和感があります。

一般的には建物が完成したことを「竣工」と呼びます。この「竣工」という言葉の概念には、外構(屋外の仕上)も完成していることを含むことが殆どですが、この現場の場合、外構工事はこれからになります。住まいを建設するための仮住まいの期間をできるだけ短くするという意図もありますが、外構工事のなかでも重要な植栽工事ができないからです。植栽工事は「生きもの」を扱う工事なので「根がつく」ということが前提です。(一般的には新芽の出る前~秋口までとされ、夏の暑い期間は植物も弱っているので工事を行ないません。)ですからこの住まいでは春先に植栽工事を行なうことにしています。住まい手には、冬の間、窓越しに庭を眺め「どのような空間(植栽)としたいか」と考えてください」とお願いしました。
新しい住まいが完成し、そこに住み始めたら全てが終わるとおいう訳ではありません。緑のことや住まいの中の家具や小物、活花に至るまで、そこに住まい続ける間は「住まいの竣工」はないのかもしれません。住まいは住まい手と共に日々変化していくものなのです。(A)