110 丈夫で長持ちする住まい

大きな台風の通過に安堵する暇もなく中越地方を襲った大きな地震。まずは被災地の皆さまのご心労お察しします。3月の末には能登地方で大きな地震があったばかりだというのに、ただただ自然の猛威に人間の行為の儚さを感じさせられます。
そこで今回は先日の能登沖地震で調査した内容をもとに「丈夫で長持ちする住まい」について少しお話したいと思います。少し長文となりますが、ご容赦を。

これは基礎の写真ですが、ご覧の通り床下換気口の周囲に大きなクラック(ひび割れ)が見られます。ご存知の通り、床下換気口は床下の通気を良くし、土台や柱などの構造材や床材が湿気るのを防ぐためのものですが、写真のように基礎が破壊されては上部構造をいくら頑丈に造っても無意味といえるでしょう。

そこで私たちは左写真のような基礎形状(一般的には「ネコ土台」「基礎パッキン」と言われる工法)としています。外周部には換気口を設けてないのが分かると思います。これで強度の低下を防ぎ、丈夫な基礎を造ることができるのです。また内部についてもできるだけ細かく基礎を通し(こちらも途中で分断しません)全体で格子状の基礎を造っています。
「それでは床下の換気は・・・?」となりますが、土台と基礎の間には2cmの隙間があり、こちらで通風を確保(全周が換気口になる)しています。これなら床下の空気が滞留することもありませんし、湿気を心配することもありません。また土台の下端も基礎と接していないので、シロアリや土台を腐らせる腐朽菌を寄せつけにくい環境とすることがでるのです。

さて続いての写真ですが建設途中の現場で見つけた「筋交い金物」の変形状況です。ご覧の通り、プレートは折り紙のように複雑に曲がり、耐力を確保するはずのビスが外れています。これでは期待していた構造耐力を確保することが間々ならないばかりか、復旧作業においても困難をきたすことが容易に想像できます。
ではどうしたら良いのでしょうか。答えは明快でリスクを分散させれば良いのです。筋交い工法では応力(地震等の力)が一点に集中するので、構造用合板などの面材で耐力壁を構成すれば良いのです。そして可能な限り耐力壁を設けることが肝要となってきます。またしっかり造られた構造体を基礎とどのように緊結するかということも大切です。これら全てが揃っていないと丈夫な住まいは造れないのです。他にも床面の剛性をどのように確保するかなど重要なポイントはいくつかありますが、この話はまたの機会に。


さて最後の写真ですが、この2枚は破壊された外壁の中で見つけた断熱材の様子です。ご覧の通り、左の写真では湿気を吸い込んだ重みで垂れ下がり、一部に断熱材が無くなっている様子が見て取れます。また右手の写真では断熱材を梱包している袋に湿気が入り込み、結露した部分の水滴が光っています。この断熱材は一般的に(おそらく一番シェアが高い)使用されているグラスウールですが、工事の作業性を考慮しビニール袋に梱包されています。この梱包が完璧であれば問題は無いのでしょうが、結果はご覧の通り。これでは壁体内に湿気を溜め込み、腐朽筋やシロアリ被害の温床となってしまいます。これらを解消する方法はいくつかありますが、私たちは現在のところ(費用対効果等を考慮し)羊毛断熱材を使用することで一つの解決策としています。またできる限り構造体を見せ、状況を判断できるような住まいづくりが「長持ちする住まい」をつくる秘訣だといえるでしょう。
私たちはこれからも「流行りだから・・・」とか「雰囲気がいいから・・・」や「安価だから・・・」といった安易な選択による木造の住まいを推奨するのではなく、十分な検証と検討のもとで「丈夫で長持ちする住まいづくり」を考え、普及に努めていこうと思っています。現在は個々に対応している住まいづくりの相談(専門家向け)を数年後には寺子屋のようにできればというのが当面の目標となりそうです。(A)