116 住まいの寿命(2)

写真は昨年末に竣工した「おどりばの家」(金沢市)の内部で、この住まいの名前の由来にもなった中核部分「おどりば」です。
素っ気ない写真からは「何これ?」くらいにしか感じられないかもしれませんが、この空間には住まいを何倍も長持ちさせるような秘密が隠れています。

住まいの寿命には概ね2種類あります。1つは前回お話したような「ハード面(建物の構造など)の寿命」、そしてもう1つは「ソフト面(建物の機能など)の寿命」です。
前者は定期的なメンテナンスにより寿命を延ばすことができますが、後者の場合はそうもいきません。例えば、よくあるのが子供部屋の例で、ある頃になると準備を強いられる。そこでリフォームを・・・と重い腰を上げることになります。あるいは、結婚などで家族構成が変わる場合。これら住まい手の変化を見越した設計がなされていないと住まいを長く使い続けることはできません。
さて本題の「おどりばの家」ですが、こちらは決して大きな住まいではありません。むしろ私たちが理想とする「小さな住まい」に近い大きさですが、中に入っても狭く感じることはありませんし、住まい手の変化にも十分ついていけるような工夫が施してあります。
冒頭の「おどりば」ですが、ここは中2階(1間×2間)と2階(1間×2.5間)の連続する小空間を階段でつないだだけのもので、本来なら廊下のような扱いになるかもしれません。私たちはこの空間に特定の機能を持たせず、隣接する居室(リビングや子供部屋)から溢れるであろう要素を受け止める空間として位置づけました。ですから「おどりば」はライフスタイルの変化に合わせ、プレイルーム、セカンドリビング、ワークスペースに変化します。どんなスタイルに変化させるかは住まい手が一生懸命考えます。でもそれはきっと至福の時となるでしょうし、考え続けられる限り「ソフト面の寿命」は来ないでしょう。
先の見えないものに対してどのように対処するか。これはとても難しい課題ですが、知恵と工夫さえあれば案外、簡単なことかもしれません。(A)
<2008.02.05 再編集、追記>