032 ホンダ・シビック

写真は1973年~1979年まで発売されていたホンダ・シビックです。この当時の国産車は外国車を模倣し、その中に独自の技術を盛り込んでいた時代でした。シビックもフォルクスワーゲン・ゴルフを模倣し、ハッチバックスタイルの中に独自の燃費技術(CVCCエンジン)とATミッション(ホンダマチック)を加え、低価格路線の販売で顧客を獲得していたと記憶しています。

私が免許を取って初めて運転した車がホンダのシビックでした。どういう訳か私の家には同じ型のシビックが2台あり(父と母と男女同権ということなのか?)、それぞれMTとATのミッションでした。そこで最初は運転感覚を養うのにAT車中心に乗り、慣れてきた頃からMT車を中心に運転するようになりました。車がコンパクトにまとめられていたので運転し易かったこともありますが、お陰で運転の上達は早かったように思います。そういう意味で私の自動車人生の始点でもあった、思い出深い車の一台です。
かつてのシビックは機能とかたちの整合性がとれていました。それはひとえに世界的成功を収めたゴルフのパッケージングを模倣し、独自の技術を盛り込むことにのみ精力を傾けていたからに他ありません。いわば余計なデザインが施されていなかったことが成功の理由だったと言えるかもしれません。ところが、1980年代にF1グランプリに参戦してからは「ホンダ=スポーツ」のイメージ戦略の元にモデルチェンジが進められ、一部の若者以外には受け入れられない車となり、ついには美しくないかたちを身に付けてしまいました。現在は世の中のニーズがミニバン中心へと変化したことも相まって、販売台数も芳しくないものとなっています。
「本質のないもの」にいくら上辺だけのデザインを施しても、一時的な影響力しか与えることができないため、普遍的な作品になることはありません。住まいは住まい手が生活するための器ですから、決して設計者の作品ではありません。しかし私たちは「本質のあるもの」としての住まいが提供できた際には、胸をはって「作品」と呼ばせて頂くことにしています。(A)

032 ホンダ・シビック” に対して3件のコメントがあります。

  1. miz-arch より:

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    ホンダ車が身近にあったことから私は「ホンダ党」とも言えるくらいのホンダ車好きでした。けれどもゴルフとの出会いが、大好きだったホンダとの決別を決意させ、現在の車選びの基準を作ることになりました。(とは言うものの、現在でもホンダ車に乗っている父の車を借りて乗ることもありますけど・・・。)
    端的に言えば、インフォメーションの得られないステアリング・フィールと安心感の得られないドアの開閉音に馴染めなかったことが原因です。エンジンに関してはトルクは薄いけど回せば楽しく運転できるメーカーなだけに残念です。

  2. aiarchi より:

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    車も家も、所有する人の人生観を表す・・・と思っています。
    国産車でも、ホンダ、マツダ、スバルにはそれぞれの個性があり、各社特有のエンジンスタイルがあります。トヨタ、三菱はエコに力を入れてきているようですが、日産だけには乗りたくない・・・というのが私個人的な意見です。
    さて、お話が「住まい」まで発展していますが、噛み締めて読ませていただきました。「本質」とは何か?自問中です。

  3. miz-arch より:

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    「車も家も、所有する人の人生観を表す・・・」まさに、その通りですね。ただ、車に興味は無くとも住まいに対してはもの凄く思い入れがある方や、その逆の方もいらっしゃいます。改めて、いろんな方がいるんだなぁ・・・と再認識させられる今日この頃です。
    私のここで言う「本質」は住まいの「機能とかたちのバランス」のことを差しています。高断熱・高気密などの機能面で優れていても、居心地の良い空間となっていなければ本質に欠けると判断していますし、見た目がきれいでも使いづらかったりするのは論外でしょう。予算には限りあるので、どのように配分していくかのバランスも重要ですね。私もいつも悩まされていますけど。。。

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