045 階段

写真は「東山台の家」の階段です。
私たちが標準的につくる階段は、踏み面(床面)が杉板で蹴込み(垂直面)が白色の塗装です。これは視覚的にも段差が分かりやすいようにするためでもあります。また階段の途中に丸い穴が開いています(実際には和紙調のアクリル板がはめ込んであります)が、これは階段下収納内に設けられた照明を利用して、普段はフットライトとして足元の安全を確保するのに利用しているからです。
大阪で暮らして培ったのが「もったいない精神」。せっかく造るのだから1にも2にも利用すれば、この上ない。。。そんな発想から設けられたフットライトでした。

大阪で暮らしていた頃、職場近くの定食屋さんへ行った際に衝撃的な体験をしました。いつもの通り仲間と一緒に定食屋さんへ行くと生憎の満席です。待たなければいけないのかなと思っていたら、お店の横にある民家の入口から入るように言われ、入ってみるとそこはその家の居間でした。しばらく観察すると定食屋さんとは厨房を介してつながっています。
つまりは行った定食屋さんは、民家を改装して造ってあり、実際にそこで住んでいた。そして満席の際は、自分の住まいを開放して客を入れていた・・・という訳です。敷地面積が少ないことからくる苦肉の策だったのかもしれませんが、なるほど合理的な発想でした。
さて、この居間ですが玄関を入ると何の隔てもなく設けられています。関西では珍しくない光景だそうですが、北陸育ちの私には新鮮でした。居間としての機能、接客のための客間の機能、そしてこの時のようなお店の機能、ひょっとしたら寝室の機能もあったかも知れません。今思えば、この頃から○LDKという固定観念的な呪縛から開放され、現在のような多機能な空間を求めるようになったのだと思います。でも「もったいない精神」も程々にしないと空間の質が落ちるので注意しないと・・・。(A)