063 玄関土間

これは「黒い家」の玄関に設けられた土間空間の写真です。庭の風景の良い部分を切り取るように設けられた窓とそれに合わせて造られたテーブル、そして上部の白い扉の中には日頃読まなくなった本が収められています。
この住まいができるまでは、住まい手の家には応接室・客間(座敷)など普段は使用しない部屋がありました。新しい住まいを設計するにあたり、こういった空間を無くす(住まい全体の利用効率を高める)ことが一つの目的でした。そこで来客の誰も(来客の大半が家に上がることを遠慮し、玄関先での応対となっていた)が利用しやすいように玄関に接客スペースを兼ねた土間空間を作りました。現在はこの空間にテーブルとが持ち込まれ、より居心地の良い空間となっています。

小さな住まいをつくるには、それぞれの部屋(空間の定義)の見直し作業を迫られます。個別に部屋を設けたのでは各々が狭くなるので用途の近いもの、あるいは同じ空間に設けても差し支えないものをまとめ再構築していきます。そこで写真のような土間空間を持った玄関が生まれた訳ですが、現在は住まい手も積極的にこのスペースを楽しむようになり、お茶の道具などを持ち込んではミニ会席などを開いているようです。設計時には寒いのではないかという不安(実際には小さなストーブを点ける程度で暖かくなることがわかりました)から否定的だった住まい手が、この空間で友人と楽しそうにお酒を酌み交わしていた姿を見たときにとても嬉しかったことを覚えています。(A)

063 玄関土間” に対して2件のコメントがあります。

  1. aiarchi より:

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    土間空間は、昔から多目的に使用される空間として、日本家屋には当たり前のようにあった空間でしたよね。多雨な気候をもつ地方では、雨期に作業をする空間でもあったわけです。また、三和(たたき)の床が室内の温熱・湿度調節を整えたりする役割もあったとか。
    実際にプランで取り入れた実績はないのですが、提案していきたい空間です。

  2. miz-arch より:

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    昔の都市部の一般家庭で土間空間があったかどうかは不明ですが、少なくとも農家など地方の住まいには必ず三和土の土間がありましたよね。aiarchiさんにご説明頂いたような機能をもった、必要不可欠な空間でした。それが職業体系と生活様式の変化に伴い失われてきています。
    私も三和土の土間を織り込んだ空間を設計してみたいと思いますが、まだまだ勉強不足で提案には至っておりません。いつの日かきっと・・・。

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