089 建て起こし

木造住宅では上棟時に写真のような光景に出会います。次々と組まれていった架構(木組み)が正確に垂直となるように「下げ振り」という道具を使って計測し、調整していきます。この作業を「建て起こし」(あるいは「建屋起こし」など)といい、その後写真で見られるような筋交い(斜めに止められている木材)で固定していきます。この際に使用した筋交いは仮設であることから「仮筋交い」と読んでいます。(構造強度をもたせる筋交いは「本筋交い」といいます。)
仮筋交いを設置する際、私たちは担当の大工さんにつききりでどこに釘が打てるか指示しなければいけません。私たちが用いることの多い真壁構造では、大部分の構造材が化粧材として竣工後も見えるので、不用意に穴を開けるわけにはいかないからです。ですから大工さんとどこに打ちたいか、どこに打てるのかのやり取りをしながら決めていきます。
一般に「下げ振り」と言うと、糸の先に錘のついたハンディタイプのものを差します。これは昔からの知恵で重力が垂直方向を示してくれるからです。ところが風の強い日にはいつまでも揺れが止まりませんし、時間がかかります。そこで写真のような(箱で囲われている)風の影響を受けない製品が活躍します。小さな目盛りを見ながら「あと1分!。。。あと5厘!」と引き手に指示を出しながら微調整していく姿は何気に活気があって上棟の日を祭りのように演出する姿でもあります。(A)