118 子供用自転車

KIDSBIKE

BMW社製

こちらはある住まい手のお子さんのもので旧型モデルです。
最新のモデルは、より子供にあったデザインになっていますが、個人的にはアルミ剥き出しのこちらのデザインの方が美しいと思います。

この自転車の何が素晴しいかというと、BMWという高級自動車メーカーから販売されているということではなく、そのデザイン思想にあります。そもそもこの自転車は子供専用のキッズバイクとして開発されていますが、補助輪を付け安全性を図るという発想ではなく、ペダルを外して練習するという発想の元に造られました。
日本では補助輪を片方ずつ外して徐々に慣れ、最後には2輪で走れるようになる・・・というのが一般的な自転車の練習方法だと思いますが、こちらのキッズバイクはペダルを外して練習します。まずは不安定な感覚に慣れるというところからスタートと行った感じでしょうか。そういえば、自転車の初期型はペダルやチェーンは存在せず、足で地面を蹴って進むというスタイルでしたね。
ちょっとした坂道を利用すると、ハンドルさばきとバランス感覚だけで乗れるようになりますから、補助輪なんかなくても怖くない・・・、そして慣れてきた頃にペダルを取付けて「こぐ」という動作を覚えていくのです。とても理にかなっています。
「ところ変われば品変わる」という諺ではありませんが、既に常識と思われることの中にもそうでないことは多々あります。住まいの設計においても同じで、「○LDKがいいなぁ・・・」という発想では良い住まいは生まれません。そもそも○LDKというのは個室の数が何室必要でということを差していますが、この発想自体、高度経済成長期の集合住宅を設計する際に用いられた思想ですから、現在の住まい(戸建の場合は尚更)には当てはまることは少ないでしょうし、個室の取り方も住まい手にとって変わってくる(開放的、少し開放的、閉鎖的など)はずです。住まい手の要望がどこにあるかを推し量り、その家族にあった常識のかたちを上手く見つけ出すことができるかというのが、住まいを設計する際の肝のように思います。
さて、わが家の長女もこの春から小学校に通い始め、遅ればせながら自転車に乗る練習を始めました。何事にもオッカナビックリの彼女は予想通り悪戦苦闘し、未だ補助輪を外せないでいます。その悪戦苦闘ぶりを見るにつけ、このキッズバイクを思い出すのですが、それはそれ、自分の自転車で練習するという優先課題に立ち向かわなくてはいけません。
ここはじっと、早く自分の足で新しい世界を見つけることが出来るようになるのを暖かく(時には厳しく)見守るばかりです。(A)