121 庭づくり

こちらの写真は竣工後1年を経過した舞多聞の家
先日、1年点検に訪れた際に撮影したものです。
私たちの仕事は設計監理が終了したらそれで完了ではありません。1年暮らしてみて不具合があった箇所の点検(殆どの場合、建具の微調整で終わります)を行います。その後は内部空間の衣替えから棚等の設置に至るまで要望があれば答えていく、いわばホームドクターのような仕事でもあります。また1年点検の際に実際に住んでみての感想を聞き、次の設計等にフィードバックしていくことも大切だと思っています。

さて舞多聞の家ですが、住まい手からは「非常に満足しています」の御言葉を頂きました。これは設計した者にとっては本当に嬉しい限りです。そしてそれ以上に嬉しかったのは、住まい手が竣工後にコツコツと手を入れて行かれた庭の素晴らしいこと。コナラの木々は青々と芽吹き、足元には心地よい影を落とす。そして足元には水が流れ低木が木の根元を彩る。当初コンセプトにあった「雑木林の中の住まい」がそこにありました。勿論、これには作庭して下さった遊庵さんの手によるところも大きいのですが、雑草引きに始まり、低木を根気強く植えられた住まい手さんの努力の賜物でした。以前、植栽を「『住まい』という達磨に最後の一筆として入れる目」と例えましたが、こちらは目どころかお化粧までバッチリの住まいとなっていました。
この住まいが出来るまで、住まい手のご主人は1週間に3回のウォーキングを日課とされていました。その他にも習い事などあれこれ多趣味な方でした。ところが住まいが完成してからはパタっと止め、今は庭いじり一辺倒だそうです。家づくりに費やしていた情熱が「今は情熱そのままで庭の方へ行った」とも話されていました。これだけ愛情を注がれた庭を思い通りに完成した住まいの中から眺める時間。私たちが想像する以上に至福のときを過ごされている様子がひしひしと感じることができました。そして我が身に帰ったとき、相変わらず自分の住まいは奥さんに任せっきりの身をただただ反省するばかりでした。(A)