140 中庭を考える

「お久しぶりです。実は中庭の事で悩んでいます。」年の初めころ、以前お仕事で知り合った住まい手さんから連絡を頂きました。中庭と言っても正確には、L型の住まいの前にカーポートがあるので、結果的にできた外部空間という位置づけで、設計された方の意図が薄いため、砂利敷きの空間として残された場所でした。そもそも建売であった住宅を求められたので、住まい手さんは内部空間を住みこなしてはいるものの、エアポケットのような中庭がしっくりこないのです…ということで一緒に考えることになりました。

多くの場合、内部から植栽を眺められるようにしましょう・・・という流れになるのですが、「それも考えたのだけど、落ち葉やお手入れのことも気がかりで、なかなか踏み込めないのです。」とのこと。あれこれお話を伺っていると、ご近所さんや友人、親戚が集まって来るお宅のようで、それなら皆さんで利用できる空間にしましょうと、かねてより希望されていたウッドデッキを考えることになりました。その際に、以前から気になっていた近隣からの目隠しとして塀を設け、暑い時期にはには日除けのタープを掛けることができるようにしたり、ベンチや作業台として活用できる仕掛けを盛り込んだり、住まい手さんの希望がてんこ盛りの場所となりました。あれこれ盛り込み過ぎるとゴチャゴチャと落ち着かない空間になりがちですが、そこはやり過ぎない程度にまとめ、統一感のある仕上げとなりました。完成した中庭を見て、ちょうど帰宅されたお子さんが、お友達と楽しそうに駆け回っていたのが印象的で、微笑ましかったです。
屋内、半屋外、屋外へと段階的に視線を移すことができるように仕掛けることで、視覚的、心理的な空間が広がっていきます。また、段階的に床レベルを地盤へ近づけていくことで、空間の使い方も増えていきます。これは日本家屋の「室」と「縁側」の関係の応用で、現代においても有効な空間の作り方となっています。そんなアイデアをもとに、これからも豊かな暮らし方ができるような場を作っていきたいと思います。(A)

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