128 基礎の補強
こちらは昨年末より始まった現場、「横法音寺の家」の基礎工事の様子です。
改修工事において古くなった設備機器の更新や古くなった部分の化粧直しを「リフォーム」というのに対し、経年とともに時代やライフスタイルに合わなくなった機能や性能を見直すことを「リノベーション」といいいます。私たちが進める『木のいえ・リノベーション』では、改修を行う際に間取りを見直すとともに、耐震性能の向上や温熱環境の向上を目的とした改修を行なっています。一般的に構造的に不利だと思われている住まいも工学的な検証作業のもとに基礎や耐力壁を見直し、既存の住まいのウィークポイントを見直すことで長く住み続けることが出来るようになります。
建物の歴史からいうと、最初は石の上に柱を建てただけの簡素な構造に始まり、鉄筋の入っていないコンクリート基礎(無筋コンクリート基礎)、そして鉄筋の入った鉄筋コンクリート基礎の上に柱を建てる現在の形になっています。鉄筋の入っていない基礎というものは、大きな石のようなもので重量によって建物の重さを支えています。無筋基礎は重さ(垂直方向の荷重)だけを支えているのであれば問題ないのですが、地震の際には下からの突き上げる力や、横からの力がかかってきます。その力がかかると、建物が浮いたり、移動してしまうのです。基礎と土台はアンカーボルトによって緊結されていますが、無筋基礎に地震力がかかると、アンカーボルトが引き抜かれたり、基礎自身が割れてしまうのです。大きな石は力がかかるともろく割れてしまうのです。そこで鉄筋をコンクリートの中に埋め込むことにより、基礎部分を粘り強くすることができます。建物の上部はとても強いものであっても、基礎が十二分に強くなければ建物は安全とはいえません。そこで、耐震改修をする際は、必ず基礎の見直し(確認と必要に応じた補強)が必要となります。基礎の補強方法はなかなか難しいのですが、現在ある基礎に寄り添うように新しい鉄筋コンクリートの基礎を打ちます。そして新しい基礎と、古い基礎がちゃんとくっつくよう施工します。まずは表面をざらざらにして、さらに穴をところどころに開けて鉄筋を刺します。その鉄筋と新しい基礎の鉄筋を緊結して一体となるように施工します。これは簡単なようでとても手間のかかる作業になります。しかし、一番肝心なところですから確実に施工したいところです。
さて写真の「横法音寺の家」ですが、こちらも解体と同時に基礎の見直しを行なっています。こちらも建築年代から無筋基礎であることが分かっていましたので、地震に対する耐力が必要な個所は前述のような補強を行ない、さらに新たに設ける耐力壁の場所には新しく基礎を新設していきます。既にある建物のなかで作業を行なうので、大型の重機も入れず手作業に頼るしかないのですが、おかげで丁寧かつ慎重に作業を進めて頂いています。監理の方も通常の新築の場合に比べ頻度が上がります。そのような事情もあるので、これからはリノベーションを行なう場合は事務所から1時間圏内限定にしようかなと検討しているところです。(K)